第4章 天泣
それでも、なんとか翔ちゃんの腕を逃れて、俺はそのままニノんちに向かった。
このままじゃ、心が粉々に壊れてしまいそうで…
ニノに、抱き締めて欲しかった。
…最低なことをしているって、わかってるけど…
「…どうぞ」
チャイムを鳴らすと、不機嫌そうな顔で、それでも中に入れてくれた。
「ごめんね!こんな時間に」
「…そんなの、いつものことだろ」
「あ、そっか~」
頑張っていつも通りに振る舞おうとしても、なんだか顔の筋肉が上手く動いてくれない。
ニノは、そんな俺の顔をジッと見つめて。
深いため息を、吐き出した。
「…おまえさぁ…なんか、隠してること、あんだろ」
「えっ…」
「俺が、なんも知らないとでも、思ってんの?」
弾劾するような眼差しが、俺を突き刺す。
ニノは睨み付けるように見つめながら、ゆっくりと近付いてきて。
俺の肩の後ろの辺りを、トンと押した。
「…ここ、付いてたよ」
「え?」
「…キスマーク」
ドクン、と
心臓が一瞬、止まった気がした
「な、なんの、こと…?」
「惚けんなよ。浮気、してんだろ」
「そんなことっ…」
「じゃあ、本気?」
「違うっ…」
「本気で、向こうのこと好きになっちゃった?俺の事なんて、もう好きじゃなくなっちゃった?」
「俺はっ…!」
俺は…
なんて言おうとしてた…?
違うって?
ニノのこと、好きだよって?
自分から、翔ちゃんに抱かれてるくせに…
俺は…俺は…俺は………
心が、引き裂かれそうだ
「…っ…雅紀っ…!」
呆然と立ち尽くす俺を、ニノが強く抱き締めた。
「…嫌だ…別れたく、ないっ…」
ニノの言葉が
心の一番深いところに
刃となって突き刺さった