第4章 天泣
俺もニノも、なんだか上手く笑顔が作れなくて。
撮影は押しに押し、終わったのは終了予定を3時間も超えた頃だった。
「…嵐、失格だなぁ…」
ニノが、自嘲気味に呟く。
俺は、なにも言えなかった。
「ねぇ、この後、暇?」
ノロノロと帰り支度をしていると、背中にニノの声が投げられた。
「たまにはさ、飲みに行かない?」
いつも真っ先に帰って行くニノがそんなこと言うなんて、滅多になくて。
「…いいよ」
俺は、頷いた。
俺も…
1人でいたくなかったから…
「2人で飲むのなんか、何年ぶり?」
とりあえずビールで乾杯し、ジョッキの中を半分ほど一気に飲み干して。
俺たちは同時に大きな息を吐き出した。
「さぁ…覚えてねぇな」
「だって、大野さん、誘っても誘っても断るじゃん」
「あ~、そうだっけ?」
「そうだよ~」
「おまえだって、最近はずっと相葉ちゃんと一緒だったろ~?」
何気ない言葉に、ニノの顔がくしゃりと歪んで。
慌てた様子で、下を向いてしまった。
「…相葉ちゃんと、なんかあった?」
思わず、問いかけてしまった。
「喧嘩でもした?」
「…喧嘩なんて、しない。あいつとじゃ、喧嘩になんない」
「じゃあ…」
「いっそ…喧嘩して、腹の中全部ぶちまけられたら…楽になれるのかな…」
ぽたりぽたりと、音を立てて大粒の涙が落ちる。
「…なにが…あった…?」
俺はニノの隣に移動すると、小刻みに震える背中にそっと手を添える。
「…なにも、ない…なにも…わかんない…」
「…え…?」
「わかんないんだ…なんにも…雅紀の中で、なにが起こってんのかも…ただ…今までと、なにかが変わっちゃった…」
それは、まさに俺の気持ちと同じで…
気がついたら、その背中をぎゅっと抱きしめていた。