第4章 天泣
【智】
「…潤…お願い…出てよ…」
何度も、電話を掛けた。
何度も何度も。
でも、潤は出ない。
祈るような気持ちで、それでも掛け続けた。
でも、出なくて…
時計の針が深夜2時を回った頃、俺は諦めて携帯をテーブルに置いた。
充電は10%を切っていた。
「…どうして…?」
そんなこと、一度もなかった。
仲の良い友人と飲んでても、俺からの着信を知れば直ぐさま折り返しの電話がきた。
だから…
わざと、無視してるんだ…
なんで…?
どうしてこうなったの…?
俺たちは、どこで間違ったの?
もう…
あの頃みたいには、戻れないのかな…?
俺がいて、潤がいて。
ただ、それだけで良かった、あの頃みたいには…
「…潤…」
鳴らない携帯を抱き締めて、俺はベッドに入った。
冷たいそれを抱き締めていても、ただ虚しいだけで。
凍えていく心を表したような冷たい雫が、目尻を伝って落ちた。
結局、明け方までうつらうつらしただけで。
寝不足でふらつく足をなんとか動かして、仕事に出掛けた。
相変わらず、潤から連絡は来ない。
もう俺から連絡する気力は残っていなくて、待つことにも耐えられなくて。
携帯の電源を落とした。
スタジオに着くと、ニノがもう先に来ていた。
今日はニノと2人で、雑誌の撮影だ。
「…おはよ」
いつものようにゲームに熱中してる後頭部に声を掛けると、珍しく弾かれたように顔を上げた。
「あ…大野さん…おはよ…」
その目の下には、薄らと隈が出来ている。
「…どうした?なんか、元気ないな?」
つい訊ねると、ははっと渇いた笑い声を上げた。
「人のこと、言えないじゃん」
「え?なんで?」
「なんか悩んでんの、バレバレ」
無理やり作ったような笑顔で、目の下を指差す。
どうやら、俺にも同じものが出来ているらしい。
「あ~、マズいなぁ…」
「うん…ね、大野さん…」
ニノがなにかを言いかけたけど。
スタッフの人に呼ばれて、それ以上は話せなかった。