第3章 洒涙雨
翌朝目覚めたら、もう潤の姿はなかった。
携帯を確認しても、メッセージはなにもない。
いつも俺が寝ている間に出るときは、メッセージを残してくれるのに…
ざわざわとざわめく胸を抑え、俺も仕事へいく支度をした。
それからしばらくの間、俺たちは互いに連絡を取らなかった。
付き合いだしてから、潤からメールも電話も来ない日なんてなかったから、スゴく不安だったけど。
かといって、俺の方から連絡する気にもなれなくて。
俺はなんの音も立てない携帯を見ながら、数え切れない程の溜め息を吐いた。
これって、俺から連絡したほうがいいんだよな、きっと…
でも、なんて言えばいい?
ごめん、なんて謝ったところで、それがなんのごめんか問い詰められるに決まってる。
ヘタなこと言うと、もっとへそ曲げるに決まってるし。
どうしたらいいんだろう…
そんな葛藤を抱えながら、次の全員での収録を迎えた。
久しぶりに潤に会えると思うと、朝からなんだかソワソワして。
会いたくないな、なんて昨日は思ったけど、やっぱり彼に会いたいんだなって、自分の心にようやく気付いた。
会ったら、ちゃんとごめんって言おう。
で、もっとちゃんと話しよう。
どうしたら潤の不安が取れるのか、トコトン話し合って、俺に出来ることはなんだってやろう。
そうすればきっと、俺が好きになったあの笑顔に戻ってくれるはずだから。
そう、思っていたのに。
「ねぇ、松潤…」
「あ、翔くん!この間言ってたやつだけどさぁ…」
話しかけようとすると、これ見よがしに無視された。
話しかけられた翔くんも、仲良さげに並んで座ってた相葉ちゃんとニノも、なにかに気付いたのか、不安げに俺と潤を見比べてる。
「…大野さん、潤くんと喧嘩でもしたの?」
「喧嘩なんて、しないよ」
「でもさ…潤くん、なんか大野さんのこと、避けてない?」
喧嘩なんて、しない。
喧嘩にすら、ならない。
なんで、こうなった?
誰か…
彼の心を取り戻す方法を、教えてくれよ…