第3章 洒涙雨
そのまま、ラグの上に引き摺り倒された。
「痛っ…」
頭をぶつけて、くらりとしたところに馬乗りになられて。
身動き取れなくなった。
「なにしてんだよっ…」
睨み付けたけど、潤は氷のように冷めた目で見下ろしてくる。
「…ねぇ、翔くんとなんの話してたの?」
「なんのって…別に大したことじゃないよ」
「へぇ…てっきり、告白でもしたのかと思った」
いきなり飛び出たワードに、頭が真っ白になった。
「…は?なに言ってんの、おまえ」
「だってさ、智の中で翔くんの存在って特別じゃん」
「んなわけね~だろっ!」
「自分で気付いてないの?翔くんを見る目が、俺ら3人と違うこと」
「意味わかんねぇっ!」
翔くんが、特別?
そんなこと、考えたこともない。
たまたま、俺ら2人が年上で。
なんとなく、3人を守ってやんなきゃって、そういう共通認識はあるかもしんないけど。
「俺が好きなのは、潤だって言ってんだろっ!」
悔しくて。
涙が滲んだ。
どうして、伝わらない?
何度言葉を重ねても、潤は俺の言葉を100%信じようとはしない。
隠してることが、そんなにいけないことなの?
みんなに言い触らして回らなきゃ、誰かに知っててもらわなきゃ、俺の気持ちは信用できない?
そんなの…
くだらない
「退けよ」
こっちから睨み付けてやると、潤は息を呑んだ。
「そんなに俺のことが信用できないなら、もうどうでもいい」
両手で肩を押して、覆い被さってる体を押し返そうとした。
だけど、手首を軋むほどの力で掴まれて、ラグの上に押し当てられた。
「潤っ…やめろっ…」
「…ダメだよ、許さない…俺から、離れるなんて…」
血走った目がギラリと光って。
俺は思わず息を止めた。