第3章 洒涙雨
【翔】
小さくため息をついた。
このところの悶々とした気持ちを、そっと、人知れずに吐き出したつもりだったのに。
「翔くん…どうしたの?なんか、元気ないよね」
智くんの方に顔を向けると、眉を下げ心配そうな顔で俺のことを覗き込んでいた。
「…うん…元気…ない、かな?」
「ないよ!いつも元気で、張り切ってるイメージだもん!」
「ふふふ、それって、相葉くんじゃないの~?」
「そっか!そうかもね~…翔くんと相葉ちゃんって、いつもみんなに気を使ってるとこ、なんか似てるよね~」
……似てる…俺と相葉くんが~?
そうなんだ…少なくとも智くんには、そう見えてるのか…
「そんなことも、ないけどね…」
「そう言えば、相葉ちゃん、ニノと喧嘩でもしたのかな~?なんか、変だよね~…あの二人…」
喧嘩…?そうなのかな?
確かに、いつもと違う感じだったけど…
ニノ…なにか、気が付いてるのかな?
俺が付けた、背中の痕…見つけたかな?
「ねえ、翔くんってさ、男同士、って否定派、だよね?」
えっ!?
智くん、何でそんなこと…
……まさかね?気付く訳ない…だったら…
「智くんは??男…あり?」
俺の質問に、答えもせずに、じっと俺を見つめる智くん…
「…あれっ?…俺、なんか、変なこと言った?」
「あ、いや…翔くんがそんなこと言う何て、意外だな~、と思って…絶対に『男同士はない』っていう派かな?と思ってたし…」
…そっか…まあ、そうだよな…
智くんは、俺が相葉くんと…っなんて知ったら、どうするだろう…?
「ねえ、智くんって、彼女いるよね?」
「えっ!!…なんで…?」
そんなに動揺しなくたって…
「いや、何となく…付き合ってる人いるんだな、って思ってたから…でしょ?」
智くんは、俺の顔をしばらく見ていたけど、ふっと視線を反らせて話し始めた。