• テキストサイズ

kagero【気象系BL】

第3章 洒涙雨


「智くん、この後予定ある?」
「ないよ」
「じゃあ、たまには飲まない?」

珍しく翔くんと二人残っちゃって。

翔くん行きつけのお洒落居酒屋で、サシ飲みすることになった。

「いいとこ知ってんな~。俺、こんなお洒落なとこ、来たことないよ」

通された個室できょろきょろしてると、翔くんが苦笑した。

「そう?松潤のが、よく知ってるんじゃない?」

不意に零れた言葉に、ドキンと心臓が跳ねた。

「あ~、確かに」

なんとか冷静さを保ってそう言ったのに。

「今度、連れて行ってもらえばいいじゃん。あいつ、智くんのこと大好きだから、頼めば速攻連れて行ってくれると思うよ」

続いた言葉に、口に含んだビールを喉に引っ掛けてしまった。

「げほっ…おぇっ…」
「ちょっと大丈夫?」

思いっきり噎せた背中を、向かいに座ってた翔くんが回り込んで擦ってくれる。

「けほっ…ご、ごめ…だい、じょうぶ…」

翔くんはそのまま俺の隣に座り、ゆっくり背中を撫でた。

「なに?そんな動揺するようなこと、言ったっけ?」

面白そうに目を細めながら訊ねるから、俺は慌てて首を横に振った。

「ちがっ…なんか、変なとこ入った…」

誤魔化すと、クスッと小さな笑いを零す。

「なんだ。松潤となんかあんのかと思った」
「ん、んなわけ、ないじゃんっ…」
「だって潤、最近智くんのこと、大好きだからさぁ…」
「そ、そんなことないっしょ!だって、男同士だよ!?」

そうだよな、なんて笑い飛ばしてくれると思ったのに。

翔くんはふと真面目な顔になって。

「そう、だよな…男同士、なんだよな…」

そのアーモンドみたいな大きな瞳を、物憂げに揺らした。

「…翔、くん…?」

そのまま黙り込んでしまった彼に、俺は漠然とした不安を覚えた。


/ 351ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp