第3章 洒涙雨
【智】
なにかが、変だ…
「ねぇねぇ、おーちゃん!今日飲みに行かない?」
「え~?やだ」
「そんな~!行こうよ~!」
相葉ちゃんが、しつこく誘ってくる。
ニノと付き合いだしてから、こっちが胸焼けするほどラブラブで。
テレビでは「また行こう」なんていいながら、俺を誘ってくることなんてなかったのに。
最近、やたらと俺の傍にいたがるし。
もしかして、ニノを避けてる…?
そっとニノの顔を盗み見ると、感情をきれいに消した顔で、ゲームに集中してた。
いつもと変わらないっちゃ、変わらないか…
でもあいつ、感情隠すの、上手いからな…
「ねぇ、行こうよ~!麻布にさ、美味しいカクテルの飲めるバーを見つけたんだ!」
「また今度な」
俺は愛想笑いを浮かべて、甘えるように巻き付いてる腕を外した。
いい加減、突き放さないと。
また潤の機嫌が悪くなる…
たまには俺から誘ってみようかとスマホを取り出すと、図ったかのように潤からのメッセージ。
と同時に「お疲れ」と素っ気なく言い捨てて、楽屋を出て行った。
『今日は旬と飲んでくる。大野さんは相葉くんと仲良くやれば?』
無機質な文字の羅列から漂ってくる、怒ってる気配。
あ~あ…
手遅れだった…
こうなったら、潤は怒りがひと段落するまで俺の意見なんて聞く耳を持たない。
ヘタに刺激すると、ますます怒りが大きくなって自分でも手に負えなくなるのをこの2年で見てるから、今はそっとしておいた方がいい。
小栗くんが、上手く宥めてくれるといいんだけどな…
思わず溜め息を吐くと、同じタイミングで相葉ちゃんも溜め息を吐く。
「…雅紀、帰るよ」
ニノの無機質な声がして。
「う、うんっ。おーちゃん、翔ちゃん、お疲れっ!」
相葉ちゃんが弾かれたように立ち上がり、ニノの後を追って出て行った。
今の…
いつもは相葉ちゃんが追いつくのを待ってんのに、振り向きもしないで、出てったな…
あいつら、喧嘩でもしたのかな…?