第1章 風花
【翔】
セットチェンジの間、俺はニノと次の衣装に着替えるために控室に戻った。
今日は雑誌の取材と撮影。
ニノと二人の仕事で、さっきインタビューは終った。
着ていた白いシャツから、Tシャツに着替えるため、ニノが俺に背中を向けてシャツを脱いだ。
ふと見たニノの白い背中…
猫背の肩の部分に、赤い痕を見つけてしまった。
あれは…あの痕は明らかに…
Tシャツを首で止めてニノが俺を振り返った。
「何見てるんですか?翔ちゃんも早く着替えて…」
「背中に、キスマーク…相葉くん、激しいんだね」
少しの揶揄かいも込めてそう言ってやると、ニノはパッと赤くなった。
「えっ?なんで…どこどこ?」
慌てて背中を確認するニノ。
「そんなとこじゃないよ、こ~こ!ほら、まだ新しい…」
俺が肩の痕を指でそっと撫でると、ニノはそれを見て、
「あいつ~!絶対痕付けない約束なのに!ったく///今度会った時、ぶっ飛ばしてやる!」
とか何とか言いながら、ニノはどこか嬉しそうで…
そんな彼の向こう側に、ニノにくっ付いてベタベタする相葉くんが見え隠れする。
「幸せそうだな…」
そう呟くと、ニノは俺の顔をまじまじと見つめた。
「翔ちゃんは?…翔ちゃんは幸せじゃないの?」
俺は、その質問には答えず、ニノの顔をただじっと見つめた。
……幸せ…俺が…?
どうなのかな~?
俺って、今、幸せ、なんだろうか…?
ニノみたいに、こんな『心の底から幸せです』みたいな顔、もう何年もしてない気がする。