第3章 洒涙雨
「好きだよ…智…愛してる…」
「俺も…」
「智…可愛い…」
「んふふふっ…」
抱き合って、愛の言葉を囁けば、彼もそれに応えてくれる。
「ねえ…俺たちの事…メンバーに話してもいいでしょ?」
戯言の延長でそんなことを言ってみたら、途端に大野さんは態度を変えて、
「ダメ!絶対にダメ!…みんなにバレたら、もう会えなくなるよ…」
「どうして??」
「どうしても!」
「さぁ~と~し~…」
「だ~め!!大体さ、どうしてそんなこと言いふらしたいんだよ!」
そんなおっかない顔しなくたって…
「言いふらしたいなんて言ってないよ~…でも、別にこんなに隠す必要はないかな~…って。
だってさ、相葉くんとかに、飯に誘われても、嘘ついて断わったりすることもあるし…」
「だから~!?」
「…嘘は…いけないかな~?…ってさ、思うし…」
だんだん尻すぼみになる俺に、
「嘘も方便!って言うじゃん!それに、俺達まで付き合ってたら、翔くんが…」
「翔くんが?」
「…まあ、それはいいけど。とにかく!絶対ダメだから!もしバレちゃったら、その時は…」
「その時は?」
大野さんは、一瞬黙ったけど、すっと目を反らして、
「その時、考えるよ…」
と、ぼそぼそ言った。
そんなだから、俺と大野さんが付き合っていることは、誰も気付いていない。
みんなの前では、あくまでも嵐のメンバーというスタンスを崩さない。
「松潤、お疲れ?」
楽屋でぼんやりしている俺に、相葉くんが声を掛けて来た。
「あ~、まあね…」
「彼女と夜更ししちゃったのかな?」
揶揄う様にニヤニヤしする彼に、
「そんなんじゃないよ…」
そう答えた。
ちらっと視線の隅に捉えた大野さんは、全く表情を変えることなく携帯の画面を見つめていた。