第2章 朧雲
ニノに連絡しなきゃと思いつつ、そんな勇気、出るはずもなくて。
俺は自宅へ帰ると、直ぐさまベッドへ潜り込んだ。
頭、痛い…
なにも考えたくない…
何度も翔ちゃんに貫かれた体は、あちこちズキズキと痛んで、悲鳴を上げてるみたいだ。
寝返りを打つのも、怠い。
そしてなにより、痛むのは体だけじゃない。
本当に痛いのは、心。
ニノに嘘吐いて、翔ちゃんと会って。
何度も何度も翔ちゃんの熱を受け容れて。
それを嬉しいと思ってしまう自分がいて…
わからない。
どうしたらいいのか。
どうすべきなのか。
これから先、どうなるのか………
「…さきっ…雅紀って!」
突然、耳にニノの怒鳴り声が飛び込んできて。
俺は反射的に目を開けた。
目の前には、眉間に思いっきり皺を寄せて怒った顔したニノ。
「え…あ…」
「おまえ、いい加減にしろよっ!なんで連絡してこないんだよっ!心配すんだろうがっ!」
付き合ってから、いや出会ってから一度も聞いたことのない大きな声でそう怒鳴ると、まだ頭がぼんやりして思考の追いつかない俺の腕を掴み、無理やり引き起こした。
「…あ…う…」
喉が引き攣ったようになってて、上手く声が出せない。
「ふざけんな!この間から、勝手なことすんのも大概にしろよっ!俺がどんだけ心配したと思ってんだよ!」
眉を吊り上げ、泣きそうに顔を歪めて捲し立てるニノを、俺はただ呆然と見つめるしか出来なくて…
「…雅紀?おまえ、どうしたの?」
深く刻まれていた眉間の皺が、ふっと緩む。
次に、おでこに冷たい感触が当てられて。
「え?すごい熱じゃん!ちょっ、マネに連絡するからっ!」
慌てた様子で傍を離れた背中を、やっぱり霧散したままの思考の中で眺めていた。