第2章 朧雲
「どうぞ」
相葉くんが俺の部屋の前に着くタイミングでドアを開けると、そこには驚いたような相葉くんが立っていた。
……なんか、可愛い…かも。
「ほら、早く入って!」
その腕を引き寄せ中に招くと、俺はドアをロックした。
「…翔ちゃん…あの、何か、話が…」
「ビールでいいよね~?」
俺はさっさと、彼に背中を向けリビングに入っていった。
渋々なのかもしれないけど、相葉くんはラグに座って、俺から缶ビールを受け取った。
「お疲れ~」
そう笑って缶を近付けると、相葉くんも少し笑って缶を上げてくれた。
俺たちは何となくテレビに目を向けた。
この間、番組にゲストに来てくれた芸人さんが、会場の笑いを取って盛り上がったところだった。
「この人さ~、この前俺の番組にも来てくれて~…」
他愛もない話に、相葉くんものって来て、次第に俺達は、いつものような感じで話していた。
来た時は、少し緊張した顔で、堅かった相葉くんもすっかりいつもの彼になり、テーブルの上にも、缶がいくつも転がった。
さて…と…
そろそろ…かな?
「そう言えばさ、俺、彼女と別れたんだ」
徐にそうブッ込むと、相葉くんは危うくビールを噴き出すところだった。
「え…?えっ?それって…?」
俺は、じりっと彼との距離を詰めながら、
「別れた…もう、会わない…終わったんだ…」
「しょお…ちゃん…」
「だから…」
「だ、だから?」
……
至近距離で、彼の顔を覗き込めば、相葉くんは、瞳をゆらゆらさせて俺を見つめ返した。
「雅紀が欲しい…」
「ほ、ほ、欲しい、って///」
その言葉に、一気に真っ赤になった相葉くん…
もう一息、かな?
「もう、彼女じゃだめなんだ…雅紀が…
雅紀がいいんだ…」
「……」
息を詰める彼は、泣きそうな顔をしている。
「好きだ…」
俺はそのまま、目の前の唇を奪った。
それは、温かくて…
ほんの少しだけ、震えていた。