第2章 朧雲
「…雅紀…」
ふわり、と背中にくっついた体温。
「ごめん…俺のせい、だよね…」
腹に躊躇いがちに両腕が回ってきて。
ぎゅっと抱きついてきた。
「俺が…さっき突き飛ばしたりしたから…」
「違うよっ!ニノの、せいじゃない…」
ニノは、なんにも悪くない。
なにも…
俺が、全部悪いんだから…
回されたニノの腕を、強く掴む。
やっぱ、やめよう。
翔ちゃんとこには、行かない。
ニノが悲しむようなこと、もう二度としないって誓ったんだから!
「ごめん!もう二度とやんない!だって、もう二度と言われたくないもん!別れろ、なんてさ!」
腕の中でくるりと向きを変えると、ニノは仔犬みたいな目で俺を見上げてて。
俺は安心させようと鼻の頭に軽いキスを落とした。
「雅紀…」
「帰ろ?」
巻き付いていた腕を外し、強く手を握る。
「うん」
ニノは安心したように可愛い笑顔を浮かべてくれた。
いったん離れ、帰り支度をする。
何気なく鞄から取り出した携帯。
『先に帰って待ってる。ずっと待ってるから』
翔ちゃんからのメッセージが届いていて。
心臓が鷲掴みにされたように、息が止まった。
『あぁ…雅紀…』
あの日の翔ちゃんの色っぽい声が、鮮やかに蘇る。
「雅紀?どうしたの?帰ろ?」
どくん…どくん…どくん…
耳元で、鼓動が煩く鳴り響く。
「雅紀?ねぇ、どうしたの?」
だめだ…
だめ…
だめ、なのに…
「…ごめん…なんか、風間が話があるって…。ちょっと飲んできてもいい…?」
俺は…
どうして………………