第2章 朧雲
【和也】
瞼の向こう側が明るくなる。
遮光カーテンを開けたままの部屋を、朝の柔らかい日差しが包んでいる。
重い瞼をそっと持ち上げると、無邪気な寝顔を晒す、愛しい人…
「…まさき…」
規則だたしい寝息を立てる彼の、肩のあざにそっと手を伸ばした。
……全てが愛しい…
夕べは、最後、どうしたんだっけ??
…この人、俺ん中で、何回ぶちまけたんだっけ?
身体中はスッキリしているということは、俺が意識を飛ばしてから、綺麗にしてくれたんだな…
「…雅紀…」
触れても、呼んでも、夢の中から戻ってこない恋人に、そっとおはようのキスをする。
……
もう一度する……
………
もう一度……
………
……
「おい!いい加減起きろや!」
全く起きる気配のない雅紀に、最後はキレ気味に声を掛けた。
「…あれっ?ニノ…早いね…はあぁ~…良く寝た!」
大きく伸びをした肘が、軽く俺の頭に当たった。
「痛ってぇ~///」
「あ、ごめん!ごめんね~、ニノ、痛かった??」
焦る彼が可笑しくて、吹き出した俺を見て、雅紀はほっとしたように笑った。
その笑顔があんまり眩しくて、俺は思わず目を反らせた。
「全くさ~、起こそうと思って何度もキスしてんのに、さっぱり起きないって、どういうことだよ?
この、不感症!」
照れ隠しに、悪態をついた。
「えっ??嘘?何度もって…ごめ~ん///
ねえ、寝たふりするから、もう一回してみて?今度はちゃんと気付くから!」
「ば~か!もう遅いんですぅ~」
ベッドから抜け出して起きようとすると、雅紀が強く腕を引くから、不覚にも、その胸の中に取り込まれた。
「夕べは、可愛かった…いつも言ってくれない言葉…いっぱい、言ってくれたよね?
…嬉しかったよ❤」
「ばっ///」
不意に至近距離でそんなこと言うから、俺は一気に真っ赤になった。