第2章 朧雲
シャワーを浴びてベッドルームに向かうと、ニノはTシャツにパンツだけを履いてベッドに腰掛け、子どもみたいに足をぶらぶらさせていた。
そっと歩み寄り、隣へ腰掛ける。
ギシリ、とスプリングが沈む音がして。
ゆっくりとニノが顔を上げ、俺を見つめた。
その瞳の奥には、ゆらゆらと揺らめく情欲の光。
「…雅紀…」
可愛らしい手が伸びてきて。
肩を押されて、シーツの海へと沈む。
「…雅紀…雅紀…」
俺を呼ぶ声は、なぜか泣いているように聞こえて。
俺は誰よりも愛おしい体を抱き寄せた。
『…雅紀…』
一瞬、昨日の翔ちゃんの姿が浮かんだけど。
ぎゅっと眉間に力を入れて、頭の中から追い出す。
「ニノ…好きだよ。ニノだけ。世界で一番、ニノが好き…」
頬にキスを落としながら囁くと、小さく震える。
「ん…俺も…」
恥ずかしがって、いつもは口にしてくれないのに。
「俺も…雅紀が大好き…」
真っ直ぐに俺を見つめながら、思いを伝えてくれる。
「ニノ…」
目を閉じると、近付いてくる気配を感じて。
そっと、唇が重なった。
舌で唇を舐められて、誘われるように少しだけ開くと、するりと熱い舌が入ってくる。
歯列をなぞられ、舌を絡み取られて。
くちゅくちゅと俺たちの交わる音が、静寂に包まれた部屋に響く。
それだけで、頭の芯がボーッとしてきて。
なにも考えられなくなる。
腕の中の愛しい男のこと以外、なにも。
唇を合わせたまま薄い肩を掴み、力を入れて上半身を起こし、体勢をひっくり返した。
「…まさ、き…」
見上げる瞳は、もう欲情に濡れそぼっていて。
体が、カッと熱くなる。
ニノだけ
ニノだけだから…
「…雅紀…抱いて…」
初めて聞いた、俺だけを求める言葉に。
底の見えない快楽の沼へと、堕ちていった。