第1章 風花
【雅紀】
「お疲れさまでした~」
今日の分を全部撮り終わり、俺は大きく伸びをした。
「相葉くん、この後飯でもどう?この近くに、気になってるラーメン屋があるんだ」
渡部さんが肩を叩いてくる。
「いいっすね!」
そう返事をしながら携帯を確認すると、メッセージが一件。
『ロケ、いつ終んの?寂しいんだけど』
上から目線な文字の向こうに、拗ねたようなあいつの顔が透けて見えて。
俺は慌てて荷物を肩に掛けた。
「渡部さん、すいません!俺、この後用事あって!」
「え?今、いいっすねって…」
「お疲れさまっした~!」
呼び止めようとする声を背に、車へと乗り込む。
「超特急で、帰って!」
「ええっ!?なんか、あったんですか!?」
「いいからっ!」
訝しがるマネを急かして、東京へと戻る。
「もっとスピード出してよ!」
「こ、これ以上出したら事故りますよ!なんでそんなに焦ってるんですか!?」
だってさ!
あいつがあんなこと言うなんて、滅多にないんだもん!
寂しいんだけど、なんて。
拗ねた顔で文字を打ち込んでるあいつの顔を想像して。
つい、笑いが漏れた。
「…もしかして、二宮さんですか?」
そんな俺の様子をバックミラー越しに見ていたマネが、ため息をつく。
「そ!愛しい愛しいニノちゃんが、寂しいから早く帰ってきて~だってさ!」
「本当にそんなこと言うんですか?あの、二宮さんが」
信じられないって顔して、マネが首を振った。
そりゃあそうでしょ!
だってこんなこと、恋人である俺にしか言わないからね!
「とにかく、急いで!ニノん家に直ね!」
「わかりましたよ」
猛スピードで流れていく車窓には、美しい夕焼けが広がっていた。