第1章 風花
『今日は大丈夫な日なの』
見た目通りの、奥ゆかしい感じが好きだったのに、あからさまにそんな風に誘ってくるようにもなった。
しかも、
『ひかりに女の子が産まれたって、凄い可愛かったよ~』
『イベントでウエディングドレス着たんだ〜…何だかドキドキしちゃった』
………
以前の俺なら、気にもならなかった彼女の言葉が、いちいち引っ掛かってしまい…
それが俺をイラつかせていた。
『結婚は当分ダメ』
事務所にも強く言われていたし、俺自身も暫くはないと思っていた。
彼女と付き合い始めた頃、
『いつか結婚するなら彼女と』
そう考えていた気持ちそのものが、最近は変わってしまったのか。
もう、あの頃の気持ちには戻れないのかもしれない……
独身主義者と言う訳でもない。
奥さんが、というよりも子どもは欲しい。
自分が3人兄弟で賑やかな家庭で育ったせいもあって、家庭を持ったら、子どもが生まれて、お正月には家族で実家を訪ねておせちを食べる…
漠然とした将来像。
『いつかは…』と思うけど、
今じゃないんだ…
まだ早い。
だったら…
結婚したいという意思を隠さなくなってきた彼女との関係を、このまま続けていけるのか…?
いつまで待てと約束もできない。
なにより、彼女なのか?
と思い始めている自分に気付いてしまっている…
嫌いになった訳じゃないけど、
このままずるずる、先が見えない付き合いを続けていっていいのか…?
俺は…
どうしたら……