第2章 朧雲
【雅紀】
ニノの視線が痛い…
「お、美味しいねっ!さすが、ニノちゃん!」
「あっ、そう…」
俺が褒めても、ニコリともしないで俺を見つめて。
小さなため息を落とすと、俯いて黙々とハンバーグを口に運ぶ。
俺も、なんだか声をかけづらくなって。
同じように無言でハンバーグを平らげた。
「…ごちそうさま…」
俯いたまま、食器を片づける。
俺はその背中を追い掛けて。
キッチンに入ろうとする直前に、捕まえて腕の中に引き寄せた。
手に持ってた食器が床に落ちて、派手な音を立てて割れた。
「…なにすんだよ…」
「ごめんっ!」
俺は思いっきり腕に力を籠めて、抱き締める。
俺のせいだ。
俺が、不安にさせてる。
こんな顔のニノ、見たくない。
俺にとって一番大事なのは
ニノだけだから
「昨日、ね…撮影すっごい押して…その後、翔ちゃんに相談したいことがあるって言われて…翔ちゃん、彼女と上手くいってないらしくてさ…それで、話聞いて欲しいって…」
必死に言葉を紡いだ。
その間、ニノは身動ぎ一つしない。
「話聞いてるうちに、その…酒、進んじゃってさ…なんか気が付いたら朝になってて…ごめん。連絡しなくて。ほんと、ごめん」
胸の奥がズキズキ痛む。
大好きな人に、こんな嘘吐くなんて…
でも、もうしないから
2度とこんなことしないから
ニノだけだから
俺にはニノだけ
だから信じて…………
「…うん…信じるよ…」
祈るような気持ちで抱き締めていると、ニノはぼそりと呟いて。
俺の腕の中でくるりと向きを変え、俺の鳩尾にパンチを入れてきた。
「ぐぉっ…!」
「ば~かば~か、そもそも来ることなんか期待してなかったし~!久々に静かな部屋でゲームに集中できて、めちゃくちゃ楽しかったわ!」
いつものような憎まれ口を叩く。
だけど、顔には笑みが浮かんでいて。
「あ~っ、ヒドイ!俺がいない方がいいってこと~?」
ホッとして、俺は再び力いっぱい抱き締めた。
「ぎゃ~っ!苦しいって!」
「ニノちゃ~ん!大好き❤」
「死ぬ~!このバカ力っ…!」