第2章 朧雲
その日は単独の取材だけで、時間も夕方からだったから、部屋に帰るとベッドに潜り込んで目を閉じた。
だけど、翔ちゃんと繋がったそこがジクジクと痛んで。
その度に、昨日のことが鮮明に脳裏に蘇ってきて。
俺は無意識に、そこへと手を伸ばした。
「は…あっ…翔、ちゃんっ…」
俺を見つめる、キラキラした宝石みたいな瞳。
優しく包み込んでくれる眼差し。
大きくて温かい腕。
俺に入ったときの、ちょっと苦しそうな顔。
体の奥底で感じた熱。
果てるときの、恍惚とした表情……
どれもがまだ鮮やかに俺の中に刻みつけられていて。
「ぅ、ぁっ…翔ちゃんっ…しょ、ちゃん…」
何度も何度も昨日の翔ちゃんを頭の中で再生しながら、夢中になって自分を高めていく。
『…ん、ん、んっ…雅紀…もう俺…』
「しょ、ちゃん…俺もっ…」
『…あっ、あっ…イク、イクッ///』
「あ、あ、あっ…翔ちゃんっ…イクッ…!」
頭の中の翔ちゃんが、真っ白い世界に包まれて。
俺は自分の腹の上に全てを吐き出した。
「…っは…ぁっ…しょ、ちゃん…」
その時。
空間を切り裂くように、携帯の着信音が鳴り響いて。
体が、ビクッと大きく震えた。
枕元に置いてあった携帯を手に取ると、ニノからで。
俺は震える指先で、タップする。
「もし、もし…」
『あ、ごめん、寝てた?』
電話の向こうは、いつも通りの声。
「う、うん…昨日、遅かったから…」
『あ~、やっぱ撮影押したんだ。大変だったね』
「う、うん…」
『ねぇ、今日家に来る?来るよね?』
「え?あ、う、うん」
『じゃあ俺、休みだからなんか作っとくわ』
「え?いいよ…」
『作っとく!じゃあな』
ニノらしからぬ強引さで言い切って、電話が切れる。
俺は、知らず詰めていた息を大きく吐き出した。
ごめん…
ごめん…
謝罪の言葉しか、出てこなくて。
俺は溢れる涙を何度も拭いながら、自分の吐き出したものを始末した。