第12章 彩雲
【翔】
ゆったりと湯船に浸かって全身を伸ばす
心地よい疲労感に包まれた身体は
少し温めのお湯に溶け出していくような感覚になる
「ふうぅ~…染みわたるわ~…」
この間ロスで買って来たバラの花の入溶剤は
湯船の上に散らばって、本当の花びらのようだ
「ああ~!ズルい翔くん!俺もやりたかったのに~」
身体の泡を流していた智くんが、慌てて湯船に飛び込んできた
「ちょっとぉ~、まだ泡ついてたけど~?」
「いいじゃん、どうせ泡の風呂になるんだもん!」
いやいや…それとこれとは違くね?
ワザとらしく渋い顔をして見せたのに、そんな俺には気付かない振りして、智くんは嬉しそうにピンク色の花びらを手に取ってはお湯の中で潰している
…ったく…ガキかよ…
そんな彼と、さっきまでベッドで貪欲に快楽を貪っていた彼とのギャップに、思わず笑ってしまう
こっそり笑う俺を、気が付けば向かい合いに座る智くんが、じとっと見ていた
「な、なんだよ…」
「今、俺のこと馬鹿にしてたよね~?」
「してないよ~」
「してた!いい年して、ガキみて~って、そう思ってたんでしょ?」
……よくお分かりで…
「いや…可愛いいなぁ~♡って思ってたんだよ」
「ほんとに?」
「ホント!」
「絶対?」
「絶対っ!!」
………
「翔くん!!」
「あっっ、ちょっと、何やってんっ///」
向かい合って抱き合う形で俺の脚に跨ってきた智くん…
盛大に白い泡が飛び散った
「さぁとし~くん!」
咎めるつもりで睨んでも、彼は嬉しそうに上から俺の顔を見降ろしていて…
入り込まれた脚の間、ぴったりと重なってしまった『おれとかれ』……
全くもう~…反応し始めちゃうじゃんか…
節操がないのを悟られたくなくて、そっと身体を動かしてくっつく位置を変えようとしたけど、智くんががっちり両手でホールドしていて、それもままならない
……こいつめ…確信犯だな~
懲らしめてやろうと、泡の中に右手を潜らせ、智くん自信を強めに握った
「ああんっ♡…翔くんのエッチぃ~…」
………ダメだ、こりゃ…制裁になんね~し///
上目遣いで見上げると、智くんはとんでもないドヤ顔で俺を見降ろしていた