第12章 彩雲
ほんの数分前まで、鬼みたいなことしてたくせにさ…
自分でも何だかよく分からないよ
でも、口を思い切り広げて、苦しそうな体勢のまま、俺をそこに連れて行こうとしてくれてる姿に…
燃え盛っていた『S』の血が、一気に凪いでいった…
自分で苦しみを強いておきながら、
助けてやりたい…って
我ながらその矛盾に呆れるけど
「…智くん…」
手首をそっと引くと、彼は俺の胸にすっぽりと収まった
「…しょお、くん…」
腑に落ちないという不安を覗かせつつも、智くんの自由になった両手は、俺の背中に回った
……こんなに大切なのに、俺…何やってたんだ?
「ごめんね…もう、しないから…」
髪を撫でながら、そっと詫びた
すると…智くんは暫く黙っていたけど、
「…どうして急に止めちゃったのか、俺にはよく分かんないけど…分かんないけどさ……」
??何を言い淀んだ?
「……たまになら…いいよ」
「えっ??」
「…ああ、だからぁ~!…俺…たぶん、翔くんも分かってると思うけど…さっきみたいなの、手錠…とか?…そんなに嫌いじゃないし…それに……」
それに…?
「…凄く気持ちよかった…あれ、また、やって欲しいかも…」
「智くん……」
「あ、でも、たまにだよ?たまに!!そんなにしょっちゅうやられたら俺…おかしくなっちゃうから」
「智くん!!!」
愛しくて、可愛くて…
もう、どうしようもない気持ちが溢れ出して、折れるほどに、汗ばんだ背中を抱き締めた
「智くん…愛してるよ…」
「…ん…俺も…」
ああああ、智くん!!
「あのさ…翔くんのカチンカチン…当たってるんだけど…ど~する?また、しゃぶる〜??」
……あぁ…
膝立ちで彼の身体を搔き抱いた結果、寸止めの俺は、智くんの胸の真ん中で、天を仰いで期待していた
言ってることとやってることの違いに、
秘かに穴があったら入りたい気持ちだった
……あ…穴、あるじゃん♡