第12章 彩雲
するりと入ってきた熱い舌が、生き物のように蠢いて。
俺の口ん中を縦横無尽に舐め回す。
「んっ…ふぅっ…」
舌を絡め取られて。
唾液を啜られて。
その激しいキッスに、頭は靄がかかったみたいにぼんやりとしてきて。
足が、ガクガク震えてきて。
体に力なんか入らなくなって。
俺は、翔くんの腰に腕を回して思いっきり寄り掛かった。
「ふっ…また、腰砕けちゃったの~?いつもだよね?」
俺を受け止めながらキスを解いた翔くんが、揶揄うように笑う。
「だってぇ~、翔くんのキス、信じらんないほど気持ちいいんだもん」
逞しい腕の中で正直に白状すると、とびきりのスマイルで今度は触れるだけのキスをくれた。
「ベッド、行こっか?」
「うん!」
手を引かれて洗面所を出て、ベッドルームへと向かう。
ベッドの端に腰掛けさせられて。
翔くんの手が、肩に置かれて。
これから押し倒されるんだなって、期待に胸が膨らんだとき。
「あ、そうだ」
翔くんがなにかに気付いたようにスッと離れていった。
「へっ…?」
「どこやったかなぁ?確か、この辺に…」
そうして、肩透かしを食らって茫然としてる俺を尻目に、クローゼットの中をごそごそと漁り始める。
「ちょっと~!なに?なんか捜し物?」
ローションは枕の下にスタンバってるし、ゴム…はしないことも多いけど、一応それも置いてあるし。
足りないモノなんてないはずなのになぁ…なんて思いながら、その背中に声を掛けると。
「あ、あった」
ようやくお目当ての品を見つけたらしい翔くんが、振り向いた。
その手には、白いもふもふのついた輪っか状のものが二つ付いたなにかが、握られてる。
「え…それって…」
「うん、手錠だよ」
えーーーーーっ!?
なんで、そんなもん持ってんのーーーー!?
「さっき、上田が言ってただろ~?俺たち、鎖で繋がれてるとかなんとか…」
「い、言ってたけど…」
「だからさ。たまには、こういう刺激のあるセックスも、いいんじゃない?」
そう言って、ぱっと見手錠には見えない、その可愛らしいもふもふを持ち上げた翔くんは。
ドS全開の悪~い顔で、微笑んだ。