第12章 彩雲
【智】
「俺は大好きだから♥」
な~んて。
♥まで付けてくれちゃったら、そりゃあ嬉しいに決まってるじゃん!
「お、俺だって大大大好きだもん!」
「え~?でも、さっき嫌いってはっきり言ったけどな~」
「そ、それはさぁ!翔くんがイジワルするから~」
「イジワル~?そんなのしたっけ?俺はただ、可愛い可愛い智くんのキス待ち顔をじーっくり堪能してただけだよ?」
「か、可愛い~?」
こんなおっさんのキス待ち顔なんて
可愛いか~?
「もう一回、見たいな~?」
ニヤリ、と。
やっぱり、ちょっぴりイジワルな顔で笑って。
右手の親指と人差し指で俺の顎を掴んで、クイッと上を向かせた。
「ほら、もう一回見せて?」
スッと細められた、Sっ気を含んだ瞳に間近に見つめられて。
ドキドキと心臓が煩く騒ぎ出す。
どうしよ…
翔くんがいつもの3倍増しでカッコよく見える…
俺、こんなMだったっけ~?
「ほら、早く♥俺のキッス、欲しくないの~?」
究極のイケメン顔でそう急かされて。
キュンと、アソコが疼いちゃう。
でも待ちきれないってのがバレるのもなんだか悔しいから、わざと唇を思いっきり尖らせて、目を閉じた。
「ぶっ…その顔っ…くくっ…」
楽しげな翔くんの笑い声と共に、頬に熱い手が添えられる。
閉ざされた視界の中、ぼんやりと感じられた蛍光灯の明かりが遮られて。
あ、くる…
そう身構えたのに、来たのは微かに掛かる熱い吐息だけ。
もーっ!
また焦らし作戦かよっ!
もう一回文句を言ってやろうと息を吸い込んだ瞬間、指先が唇に触れて。
思わず、そのまま息を止めた。
ねっとりと。
わざと焦らすように唇をなぞられて。
その動きに、ゾクゾクが体の奥底から沸き上がってくる。
ただ指で触れられてるだけなのに…
なんか、すげー気持ちいい…
「は、ぁ…」
少しずつ上がってきた熱を外へ出そうと、息を吐き出した瞬間。
「んんっ…」
熱い唇が、ようやく重なった。