第12章 彩雲
「あ、上田~、やっぱ貝食べて行きなよっ!俺、今から捌くからさぁ」
無理やり翔くんに上田から引き剥がされた俺は、キッチンへと向かった。
「え、いや、いいっす!2人でゆっくり食べてくださいっ!」
「遠慮すんなって~。そもそも、おまえが持ってきてくれたもんだし。ちょっとでいいから食べてけよ~」
「そうっすか~?なら、ちょっとだけ…」
上田はそう言って、ソファに深く体を沈める。
「ちょっと智くん、本気!?」
翔くんが慌ててキッチンへ飛び込んできて。
小声で抗議の声を上げた。
「ん~?うん。だってせっかく持ってきてくれたんだから、悪いじゃん?」
「そう…だけど…」
そう言って作ったのは、ふて腐れた顔。
「…せっかく…智くんと鎖プレイしたかったのに…」
「は?なに?」
「あ、いや。なんでもないっ!」
なんかボソボソ言ってたけど、良く聞こえなくて。
聞き返したら、誤魔化された。
「…俺も、手伝うよ」
「え~?いいよ。翔くんは座ってて?」
「…それって、俺がここにいたら邪魔ってこと?」
「違うよ~。上田、翔くんのためにわざわざ来たんだからさ~。相手してあげればってこと!」
「…わかったよ…」
そうして、とぼとぼと撫でた肩を更に落として、リビングへと戻っていく。
あちゃ…
なんかちょっと拗ねちゃったかな…?
まぁ後で鎖プレイでもなんでもヤらせてあげるから
それで許してね♡
「おお!このアワビうまそっ!ちょっと厚めに切って、ステーキにでもするか~。白ワイン、あったっけな~?」
カウンター越し、翔くんと上田が向かい合ってコーヒーを啜るのを見つめながら。
俺はでっかいアワビを手に取った。
無意識に出た、鼻歌を歌いながら。