第12章 彩雲
【翔】
ちっ///
せっかくいいところだったのに…
誰だよこんな遅くに
仕方なく立ち上がって覗き込んだモニターには、サングラスをかけた怪しげな男が……
「上田〜!」
俺の背中越しにモニターを見た智くんが声をあげた。
上田?
…あ、ホントだ。上田だ。
「はい…」
通話ボタンを押すと、発泡スチロールの箱を掲げた上田が、嬉しそうに、
「あ、兄貴!これ!貝です、貝!!
さっき受け取ったから、早く兄貴に届けたくって♪すんません、こんな遅くに」
貝…貝って……
ああ、そう言えばこの間、友達が仙台の漁港で漁師やってるから、海鮮が届くって。
羨ましがった俺に、今度来たら兄貴に全部お届けしますよ!
何て言ってたっけ…
にしたって、今〜?
すると智くんが、
「どうぞ〜♪」
って。
俺より先にセキュリティを解除した。
「上田、貝だって!愛されてるね、翔くん」
そう笑った彼は、俺の頬にキスをして、
「どうする?俺、隠れよっか?」
と言った。
「…え…ああ…いいよ、一緒にいても。変じゃないだろ〜?」
「まあ、そっか。メンバーだもんね〜」
「う、うん…そうだよ。隠れる必要なんか無いよ〜」
ピンポーン♪
その時。今度は玄関のドアが来客を告げた。
ドアのロックを開けてドアを押すと、嬉しそうに息を弾ませた上田が、発泡スチロールの箱を俺に押し付けながら、
「兄貴〜、よかった!家にいて〜!留守だったらどうし…え、大野、くん…?」
「こんばんは」
上田は、リビングから顔を出した智くんに、驚いた顔をして固まった。
そ〜だよな、その反応になるよな…
「まあ、入ってよ!」
「え、でも…いいんすっか?」
サングラスを外して上目遣いに俺たち二人を見比べる上田…
「当たり前じゃん!車〜?コーヒーでも入れるよ!」
こうして。
さっきまで智くんとくっついてイチャイチャしていたソファーに、上田が座った。
その前に座る俺に、キッチンでコーヒーを入れる智くん……
なんだか、しっくり来ないけど……