第11章 朝暉
【翔】
久々に、最後の一滴まで、
覚えたての高校生と勝負できるレベルで
智くんのこと、
抱き潰してしまった…
くぅくぅと……
可愛い寝息と、無防備な寝顔を晒して、
智くんは疲れはてて眠っている
無理矢理つれてったお風呂場でも、
俺に凭れて、半分寝てたくらいだから…
なんだかんだ言ってもさ、
もうそんなに若くはないからね…
「…ごめんね…」
指先で、そっと頬を撫でると、寝てるくせに、広角を上げてにっこりして、
「…しょお…く〜ん…」
夢の中で俺の名を呼んだ
そんな智くんに、そっと触れるだけのキスを落として、俺はベランダに出た。
日中は暖かくても、夜もこの時間だ…
冷たい風に背中を丸めながら煙草に火をつけた
テラスの手すりに凭れてゆっくりと紫煙を吐き出すと、俺はゆっくりと目を閉じた。
潤が智くんを監禁していた、海辺の別荘
潤の留守に、と智くんに会いたいために車を走らせた
今思うと、潤だけじゃなくて、俺も少し…いや、かなりヤバかったんじゃないかって思う
別荘で、潤と鉢合わせして、智くんを奪い合って殴り合いなんかになっていたら…
嵐は、終わってたな…
そう思うと、俺らしくない行動に、余程切羽詰まってたんだな…と…改めて感じた
「よかった~…」
声に出してみて、ひとり笑った
俺たちは男同士だ
昔よりはオープンにカミングアウトする人が増えたとはいえ、世間的にはまだ理解されていない部分も多い
実際俺も、偏見はなくても、自分とは違う世界の話だって思っていた…男同士なんて、考えたことも無かった
それが今や……
色んな意味で、もう女の子は、ないかな~…
と、そう思う
まあ、智くん以外、無いかな?
「変われば変わるもんだぜ~」
煙草を消して部屋に入ると、その温かさにホッとした
「温っけ~…智くんみたいだな…」
自分の独り言に笑った俺は、智くんの眠る寝室に戻った