第11章 朝暉
【智】
「よし、準備完了!」
朝から掃除して。
ちゃんとゆっくり昼寝もして。
お風呂にも入って、隅々まで綺麗にして。
疲れた翔くんがビール飲むだろうから、簡単なおつまみもちゃんと用意した。
あ、カロリー控えめなのをね。
最近、油断するとすぐに顔、まん丸になっちゃうから。
むふ…
なんか俺、翔くんの奥さんみたい♡
翔くんが帰ってきたら、お帰りなさいのちゅーでもしてあげよっかな~♪
そして、その後は…
「あ、やべっ…」
すぐ後にやってくる甘~い時間を想像しながら、テレビの横に置いてある時計を見ると、時刻は22:58。
もうすぐ、始まっちゃう!
慌てて冷蔵庫からビールを取り出し、ソファに座って。
テレビの電源を入れる。
いくつかのCMの後に流れる、聞き慣れた音楽。
そして、画面いっぱいに映る、大好きな人。
今日もイケメてるなぁ~♡
んふふ…
あのイケメンキャスター、俺のだもんね~!
誰にともなく自慢しながら、ふと視線を下げると、翔くんの首元には赤と青のストライプのネクタイがぶら下がってる。
単なる偶然の一致。
スタイリストさんが、たまたまあのネクタイを選んでくれただけなんだろうけど。
なんかそれだけで、気分がアガる。
まるで2人だけの秘密の暗号みたいじゃない?
今日は特別大きなニュースもなくて。
ビールを飲みながら、翔くんが解説してくれた日本と韓国の関係にへぇ~って思ったり。
スポーツコーナーで野球の解説の人と楽しそうに話してるのを見て、釣られて笑ってみたり。
あっという間に1時間終わった。
すぐにでも来て欲しいけど、反省会とかあるだろうしと、先日翔くんが出ていた番組を見直してると、思ったよりも早く携帯が震えた。
『今から行くよ』