第11章 朝暉
本番中、打ち合わせ通りに進んでいく。
急な飛び込みの速報も無く、安心して『プライチ』も終わった。
よし!
今日は噛まなかった♪
これならば、智くんも褒めてくれる。
簡単な反省会を終えて、いつになくスピーディーに行動する俺に、
「翔さん、この後、何かあるんですか?」
と聞いてきたのは、嵐のチーフマネ。
俺についてくれることも多いし、
大袈裟じゃなく、嵐の全てを知る人。
……話しといた方がいい、よな…
「何かっていう程の事もないけど…
今日は、大野さんのマンションに送って欲しいんだ」
「…あ…えっと…それってつまりは…」
俺は黙って頷いた。
「そういうことでしたか。分かりました。」
あれっ?それ、だけ?
あ、別にただ遊びに行くと思ってるとか…
「良かったですね」
「…?」
「やっと、大野さんと…晴れて一緒になれるんですね♪」
「一緒に、って…」
そのワードが、夫婦になるみたいでなんか可笑しくて…
笑う俺に、マネは真顔で、
「雨降って、地固まる、ですね!
おめでとうございます」
「お、おおぉ、あ、ありがとう」
満面の笑みで祝福の言葉をくれたマネに、なんだか照れたけど。素直にありがたいって…そう思った。
俺たちのごたごたで、凄く心配掛けたし、迷惑もかけたから…
『今から行くよ』
車のシートに身を沈め、智くんにLINEすると、直ぐに既読が付き、
『おっけ』
とレスがあった。
時間は1時を回ったところ。
街は日中に比べ人通りも車も少ない。
夜の闇が、恋しい人の元へと向かう、俺のニヤけた顔を上手いこと隠してくれる。
あの角を曲がれば…
「じゃ、ありがとね」
車を降りようとするとマネが振り返って、
「明日は午後3時にお迎えに行きます、が……」
「が…が、なんだよ??」
「無理しないでくださいよ~?大野さんにも」
「無理って、何だよ~…」
パッと赤くなった頬を見られない様にキャップを目深にかぶり、軽く片手を上げて車を降りた。