第11章 朝暉
【翔】
「櫻井さん、この後、デートですか?」
打ち合わせが終わり、一息ついたところで一緒にやっている女子アナの彼女にそう言われた。
「えっ?何でそれを…あ、いや…えーっ?」
「うふふふ♪そんなに慌てなくても(^^)何だかソワソワしてる感じがしたから…違いました?」
この娘……
案外鋭いんだな〜
アイドル上がりだし、温室育ちの純粋培養 かと思ってたけど…
まあ、別に隠すこともないのか…
「いや、違わないよ…」
「幸せですね♪櫻井さんの恋人さんって」
いくら鋭い彼女でも、
俺の恋人さんが『大野智』とは気付くまい。
「いや〜、君を恋人にできるやつの方が、よっぽど幸せ者だと思うけど。」
「そんなこと〜…」
俺の、ほぼ社交辞令に彼女は、パッと頬を染めた。
普通なら、こういうのが、堪らなく可愛いんだろうな〜
だけど、全くときめかない俺は、普通じゃないんだな…
そう思うと、なぜだか不思議な気がした。
俺はもう、この先も智くんにしかときめかないのかな?
「マジか…」
「えっ?何か言いました~?」
「えっ?いや、何も…」
いけねぇ~、心の声が漏れ出てしまった。
俺…思ってるより、浮かれてるみたいだ。
今日の生放送が終ったら、智くんに会える♡
やっと、誰にも遠慮することなく、彼のこと、抱き締めることが出来るんだ…
夕べは風呂に入ってる間に、夢の中へ逃げられたけど…
今夜はきっと夜に備えて昼寝して、俺のこと待っててくれてる筈🎵
お風呂に入って、念入りに洗ってくれてたりしてるかも。
そんで、テレビの前に陣取って、これから始まるzeroの生放送、待って……
あ…
そうだ!!
本番10分前、俺は慌てて楽屋に戻り、今まで絞めていた緑と黄色のストライプ柄のネクタイを、青と赤のものに替えた。
………青と赤…
今夜は一緒に♡♡
っていう、俺のメッセージ。
智くん、気付いてくれるかな?
本番3分前、俺はスタンバイするために、スタジオのドアを開けた。
何年も繰り返された月曜の夜。
今夜は気を抜くと、スキップしそうだった。