第11章 朝暉
俺も大好きだよ
ちゃんと言葉で伝えたいのに、なんだか胸がいっぱいで。
言葉の代わりに涙ばっかり出てくる。
「ねぇ…言ってくれないの?」
「ふぇ…?」
「智くんは…俺のこと好きって、言ってくれないの?」
その響きが、ちょっとだけ寂しそうに聞こえて。
そうだよね
翔くんがこれだけ想いを伝えてくれたんだもん
俺もちゃんと伝えなきゃ
なんとか涙を止めて、翔くんの腕を抜け出すと、滝のように流れてた鼻水をずびーっと吸い上げた。
「ぶっ…ホント、子どもみてぇ」
翔くんは笑いながら、ハンカチで鼻水も拭ってくれる。
俺は目を閉じて、一度大きく深呼吸して。
それから真っ直ぐに翔くんを見つめた。
翔くんのどんぐりみたいなまぁるい目が、すっと細められる。
「…翔くん…」
「つーか、ヒドイ顔だよ?」
「あの…俺…」
「あー、また鼻水垂れてきた」
「んもーっ!せっかく真面目に言おうとしてるのにーっ!」
「ぶぶぶっ…ごめんごめん」
でも
これくらいが俺たちらしくていいかもしんない
「翔くん」
もう一度息を大きく吸うと、俺の顔は自然に笑顔になった。
これから先も、ずっとね
「俺…翔くんのことが大好き」
2人でこうやって笑っていようね
「翔くんのことが世界で…ううん、宇宙で一番、大好きだよ」
それが傷付けた人たちへの償いになるか、わかんないけど
でも立ち止まってウジウジしてたってなにも変わらないなら
だったら笑顔で前を向いていたいと思う
「翔くんを、愛してる」
だからずっと
笑っていよう
「…智くん…」
それまで笑顔だった翔くんが、ちょっとだけ顔を歪めて。
目の端に、きらりと光るものが見えて。
それを隠すように、翔くんの腕は俺を抱き寄せて。
俺はまた、広くてあったかくて優しい腕の中に包まれた。
「俺も、智くんを宇宙で一番愛してるよ」