第11章 朝暉
「…翔くん…」
開けちゃいけないって思ってるのに。
俺の手は、勝手に玄関のドアを開けてた。
「智、くん…」
走ってきたんだろうか。
少し息を弾ませた翔くんは、玄関のドアに手をかけたまま、じっと俺を見つめてる。
俺も、何も言えなくて。
帰ってって
言わなきゃいけないのに…
喉の奥に引っかかったまま出てこない言葉を、なんとか引っ張り出そうとしてると。
「入っても、いい…?」
遠慮がちに、そう聞かれて。
「…うん」
心とは裏腹に、頷いていた。
「ありがとう」
ふんわりと浮かんだ優しい笑みに、胸の奥がきゅっと鳴る。
ああ…
やっぱ、俺
翔くんが好きだ…
「なんか飲む?コーヒー淹れようか?」
「ううん、大丈夫。…ここに座って?」
一緒にいちゃダメだって気持ちと、傍にいたいって気持ちがせめぎ合って、どうしたらいいのかわかんなくなって。
逃げるようにキッチンへ行こうとした俺にむかって、ソファに座った翔くんは自分の隣をポンポンと叩いた。
「う、ん…」
真っ直ぐな眼差しに逆らえなくて。
俺は少し間を開けて、翔くんの隣に腰を下ろす。
「智くん…」
翔くんの声はちょっと寂しそうな響きを帯びていたけど、俺は視線を合わせないよう手元を見つめた。
「…ちゃんと、話してきたよ。松潤と」
ポツリと、翔くんが言葉を落とす。
「…うん…」
翔くんがなにを言い出すのかわかんなくて。
心臓がどくんどくんと嫌な音を立てた。
「それでね…決めたんだ」
静かに告げた声は、なにか強い意志が込められていて。
思わず、顔を上げてしまった。
翔くんは、迷いのない真っ直ぐな目で、俺を見ていた。
「翔、くん…?」
「智くん…俺と…」
「しょ、翔くんっ!俺たちやっぱりっ…」
怖くて。
怖くて
怖くて
怖くて…
慌てて別れの言葉を口にしようとした瞬間。
熱い腕の中に包まれた