第11章 朝暉
【智】
静かな部屋に、秒針を刻む音だけが響いている。
手の中のスマホには、なんのメッセージも来ない。
翔くん…
大丈夫かな…
潤…
どうしてるだろ…
相葉ちゃんちにいるってことだから、きっと傍に相葉ちゃんもいてくれるんだろうし
まさか、殴り合いの喧嘩、なんてことにはならないだろうけど…
そう考えて、俺は小さく笑った。
喧嘩、なんて…
自分にそんな価値あると思ってんの?
潤の想いを踏みにじって
翔くんの想いも受け取れなくて
俺には、あんな素敵な人たちに思ってもらえるような価値なんてない
そうだよ
俺には二人の想いを受け取る資格なんてないんだ
握り締めた真っ暗な画面に、ぽたりと雫が落ちる。
俺…
きっと
ずっと翔くんのことが好きだったんだ
でも翔くんは俺のことそんな目で見てもなくて
自分から一歩踏み出す勇気もなくて
自分の気持ち
誤魔化して…
好きだよって
曇りのない真っ直ぐな愛情をくれた潤に縋って寄り掛かって…
潤への気持ちが嘘だったわけじゃない
本当に好きだった
愛してた
でも
心のどこかでは翔くんのこと忘れられなくて
そんな俺の卑怯な心が
俺と潤を狂わせた
全て俺の
俺の責任なんだ
「…サイテーだな…俺…」
ぽたりぽたりと。
頬を伝って落ちた涙は、小さな水溜まりを作った。
「…もう…捨てろよ…」
それは、自分の奥へと投げ掛けた言葉。
捨てよう
棄ててしまおう
翔くんへの想い、全て
俺にとって
いや、5人にとって
嵐という場所を失ってはいけない
ましてや
リーダーである俺のワガママで
4人からそれを奪っちゃいけないんだ
だから…
だか、ら……
「うっ…ぅぅぅっ…」
捨てなきゃと思うのに、心は切り裂かれるように痛んで。
涙が止まらない。
「翔くん…翔、くん…」
想いが言葉になって溢れたとき。
“ピンポーン”
チャイムが、鳴った。