第10章 慈雨
その後、落ち着いた松潤を連れて、楽屋へと戻った。
そこにはもう、リーダーと翔ちゃんの姿はなくて。
横で、松潤がホッとしたように微かな息を吐いたのがわかって。
胸の奥が、ぎゅっと痛くなった。
「撮影、もう終わりだって」
スタッフに確認しに行ってたニノが、戻ってくる。
「あ、そうなの?」
じゃあ、もしかして二人で帰ったのかな…?
そう思いながら、もう一度松潤の顔をそっと覗うと、ちょっと苦しそうに頬を歪めてて…
思わず、だらんと下げられた手を握った。
「ねぇ、松潤!今日、俺んちで飲もう!」
考える間もなく、叫んでた。
「えっ…?」
「父ちゃんが昨日、餃子持ってきてくれたんだ!一人じゃ食べきれないし、どうしよ~って思ってたとこだし!」
「そんなの…ニノと食べればいいじゃん…」
「今日は、松潤と餃子パーティしたい気分なのっ!」
「…いいよ、俺は…」
「潤くん、今日はこの人に付き合ってやってよ。この人、言い出したら聞かないんだから」
逃げ腰の松潤の背中を、ニノがさらりと押してくれる。
「え?相葉くん、そんな人だっけ?」
「そうそう!そんな人!言い出したら聞かないの!」
「嘘だろ…」
「いいからいいからっ!いっくよ~!」
「えぇっ…ちょっとっ…」
グズグズ言い続ける腕を、強引に引っ張った。
「今日は、朝まで飲むぞ~っ!」
「あ、朝までっ…!?俺、明日打ち合わせ…」
「大丈夫大丈夫っ!俺も、明日収録だから!」
「大丈夫って…!」
「潤くん、観念してください」
クスクス笑いながら、ニノが松潤の反対側の腕を掴んで。
「嘘だろ~っ!?」
二人で引き摺るようにして、地下の駐車場へ向かった。