第10章 慈雨
【雅紀】
ようやく
笑ってくれた
松潤ってば、本人は気付いてないみたいだったけど、ずーっと迷子の子どもみたいな泣きそうな顔しててさ
見てるこっちが、辛かった
仕方ないよね
だって松潤、まだリーダーのこと大好きだもんね
そんなに簡単に割り切れる程の思いなら、最初からメンバー同士で付き合おうなんて思うわけない
悩んで苦しんで
それでもどうしても欲しくて
手に入れた
俺もニノも、そうで
リーダーもそうで
きっと翔ちゃんもそうで
だから松潤の気持ち、すっごくよくわかるよ
そう伝えたかったんだけど。
なんか、上手く伝わんなかったかな~?
俺、そういうの下手っぴだからなぁ…
思わずニノの顔を見ると、ニコッと笑って肩を竦める。
まるで、わかってるよって言うみたいに。
こういうとこ
やっぱ好きだなって思う
って!
今はニノのことじゃなくて!
「…なんで…俺と智はそうなれなかったのかな…」
ぎこちないながらも、微笑みを浮かべて俺たちを見ていた潤が、ぽつんと呟く。
「え…?」
「相葉くんとニノみたいに…いろんな困難があっても、二人で乗り越えて…そうやって穏やかに笑っていけるって…そう思ってたのに…」
「…潤…」
「どこで、歯車が狂っちゃったのかな…」
一瞬、顔がくしゃりと歪んで。
松潤は俯いた。
「潤くん…」
小さくなった肩を、ニノが抱きしめて。
俺も、その上からニノごと松潤を抱きしめる。
「…大丈夫…もう、泣かないよ…泣いたって…もう、どうにもなんないこと、わかってるから…」
強がりを言いながらも、また肩が震えて。
俺とニノは、無言でその体を抱き締めていた。