第10章 慈雨
もし誰か通りかかっても見られないように、
ベンチに俺を腰掛けさせ、自分もその隣に座った。
「松潤…無理しなくていいからね…
ふたりを許せない自分を責めることない!
俺だって松潤の気持ちよく分かるよ~
リーダー、酷いよね!
松潤と付き合ってて、別れてないのに、翔ちゃんと…って。
いくら気持ちは、もうすっかり離れてたとしてもさぁ~!」
……相葉くん…何気に酷いこと言ってる…よね?
でも本人は気付いてないみたいで…
「だってさ、松潤がリーダーと付き合ってるって知ってるのに、横からあっさりとさらってくみたいな…」
「相葉くん…さっきから、何気にグサグサ来るんですけど…」
「えっ??グサグサ、って…俺が~?」
はあぁ~…何だか、力が抜けるよ、相葉くん…
「あ、ニノ!!」
相葉くんの嬉しそうな声に振り向くと、
俺たちにゆっくり近付いてきたのはニノだった。
「どうした?本番?」
「いや…まだだけど…どうしたかな~と思って…
って、もしかして、二人…泣いてた?」
俺たちの涙の痕に気付いたニノが、目を見開いた。
「いや、これはさ、何ていうか…その~…」
「あのさ。お宅の旦那、天然過ぎて引くわ…」
「えっ!?俺?天然って…」
「知ってる…」
焦る相葉くんは無視して、ニノはそう笑った。
その笑顔に、俺も自然と笑顔になる。
「ちょっと~、何で笑ってんの?俺、なんかおかしなこと言ったかな~?」
「あなたはいつもおかしいでしょ?」
「何でだよ~、ニノ~///酷いじゃん」
「酷くないです、ホントの事言っただけだし…」
「ホントのこと~?聞き捨てならないな~?それじゃ俺がいつも天然過ぎるみたいな言い方じゃん!」
「実際そうだし…」
「はあ~??意味わかんないんですけどぉ~」
「まさか、自分で気づいてないとか~?」
「ふふふっ…」
「「まつじゅん…」」
ふたりのほんわか温っかい痴話喧嘩に、
気が付いたら俺、笑ってて…
そんな俺に、二人は顔を見合わせていた。