第10章 慈雨
【潤】
見ていられなくって。
堪らず部屋を出た俺の後を、相葉くんが追いかけてきた。
「……なんだよ?」
「えっ?なんだよ、って、なんだよ〜」
「あのさ…俺なんかのことはほっとけよ」
「松潤……」
自動販売機がふたつ並んだ休憩スペースには
俺と相葉くんしかいない…
そんな人目を気にしない空間のせいで、
俺はまた優しい彼に甘えてしまう…
「みんなに迷惑かけてさ、自分のことばっかり考えてる…どうしようもない俺のことなんか…もう構うな…」
「そんなことない!!」
人気が無いとはいえ、その声で誰かが
『何事か?』と駆けつけてきそうな…
見れば泣きそうな顔の相葉くんが、俺をじっと見ている。
「……」
「そんな…そんなこと言うなよ…松潤が、誰よりも優しくて、メンバーのことも、嵐のことも、凄く考えてて…大切に思ってること…俺、知ってるしさ…」
「…相葉くん…」
「嵐が大事だから、他の4人のことが好きだから…
だから苦しんだ…簡単には割り切れないんだよ…」
一生懸命に伝えようとする彼の目から、
真珠みたいな、綺麗な涙が零れ落ちた。
……泣くなよ…
俺なんかのために…そんな泣くな…
「…分かったから…一人にして欲し…」
「ダメだよ!一人にはしない!
…そう決めたんだ、ニノと…
松潤がちゃんと笑えるまで…
あの二人が…翔ちゃんとリーダーが付き合うことを認めなくってもいいんだ…
でも、ちゃんと松潤が心から笑えるまで…
俺たちは、嫌がられても側に…
ずっと側にいるから!」
「……相葉…くん…」
頬に違和感を覚えて手をやれば、それは俺の涙だった。
…俺……泣いてたのか…
「…苦しいのはさ、簡単に嵐を壊せないって…
大切な嵐を守りたいって、松潤がそう思ってるから…
本当に4人の中の誰かを憎いと思うなら、
嵐を壊してしまえば済むことじゃない…」
「……」
彼の言葉が、俺の心の奥を震わせた。