第10章 慈雨
【潤】
相葉くんと過ごす時間が心地よくて…
強引に来て、
頼みもしないのにご飯作って、
人懐っこい笑顔で俺を見て、
だけど、何も聞いてこないし、
押し付けてこない………
そんな彼に、思わず吐いた本音と弱音
『翔くんと智の間に、割り込んだのは俺の方』
智をあの別荘に軟禁して、
俺はその先に、どんな未来を描いたんだろう?
どうしたって、
どんなに俺が足掻いたって、
離れてしまった智の心を取り戻すことなんか出来っこないって……
分かっていた。
分かってたけど……
「あ、そう言えばさ!超旨いプリンがあったんだよ〜♪松潤、デザートに食べるでしょ?」
「え〜…俺もう腹一杯なんだけど…」
「大丈夫、大丈夫〜デザートは別物って言うじゃん!」
そう言いながら嬉しそうに冷蔵庫を開けて、箱を取り出す彼に、
「それを言うなら『別腹』でしょ…」
「まあまあ、固いこと言わないで♪…はい、こっちは松潤のね♡」
そう言いながら、スプーンと一緒に俺の前に置かれたプリンは、透明の瓶に入った……
「これ……」
「前に松潤が美味しいって言ってたから…
ちょっと帰りに寄り道して買ってきた…
ほら、食べよ食べよ!」
「うん……」
これ売ってる店って、結構遠いのに、
わざわざ買ってきてくれたんだ…俺のために…
俺なんかのために…
プリンはバニラビーンズの香りが甘くて、
クリーミーな大人の味…
『ああ、これ旨っ』なんて大袈裟に感動しながら食べる相葉くんの横で…
俺は何だか泣きそうになった。
ありがとう…相葉くん…
ありがとう…ニノ…
ふたりにこんなにしてもらって…
自分勝手なことして迷惑かけたのに…
………ちゃんと向き合わなきゃな…
智と……
翔くんと…
絶対に許さない
そう思っていた気持ちが、口の中で蕩けるプリンみたいに…俺の心のささくれを、優しく包んでくれる
明日……
5人の仕事のとき、
ふたりに言おう……
好きにすればいいって…
勝手に幸せになればいいって
まあ、なんなら、もう少し
優しい言葉で…だけどね…