第10章 慈雨
松潤を背中にくっつけたまま、チャーハンを作って。
無言で、それを食べた。
なにか言わなきゃって思ったけど、向かい側に座って、ずっと俯いたままの彼が、今どんなことを考えてるのかわからなくて。
ヘタなこと言って
リーダーのこと変に煽ってもマズいし…
俺
そういう空気読むの苦手だしなぁ…
ううう~っ!
こういう時ニノがいてくれたらいいのにっ!
あいついつ来るんだよ~っ!
1人で悶々としながら食べ終えた。
「…後片付け、やるね」
片付けようと腰を浮かした時。
「…あのさ…」
ようやく顔を上げた松潤が、俺を見つめる。
その目がすっごく真剣で。
俺は思わず上げた腰を、もう一度下ろした。
「うん」
「…今日、翔くんと一緒だったんだ…」
「…うん」
そこで口籠もった彼を、俺はただ黙って見つめ返す。
先を急かしたら
なにも話してくれない気がしたから
松潤は、しばらくなにかを迷うように視線を彷徨わせて。
それから大きく息を吸い込んだ。
「絶対、許さないって思ってたんだ。俺と智の、ちょっとした隙間に入り込んでさ…俺たちが、どんな風に愛し合ってきたのかなんて、知らないくせに」
吐き捨てるような言葉に、思わず口を挟みたくなったけど。
「…でも…」
すぐにトーンの下がった声に、慌てて言葉を飲み込む。
「…一緒に仕事して…楽しかった…。俺、若い頃ずっと、翔くんに憧れてて。お兄ちゃんみたいに思ってて…なんかわかんないけど、急にその頃の気持ち、思い出して…」
「…うん…」
「ずっと…2人が俺たちを引っ張っててくれたよね。ぐいぐい引っ張っていく翔くんと、後ろから見守ってくれてる智と…言葉にしなくても、お互いの役割分担が出来てて、すごく深いところで繋がってるみたいで…。スゴく、羨ましかった…」
「…松潤…」
きゅっと引き結んだ唇の端が、震えて。
「そんなこと思い出したら…なんかもう、仕方ないのかなぁって…。割り込んだのは、翔くんじゃなくて、俺だったのかなって…」
「…っ…そんなこと、ないよっ…」
思わず、両手を伸ばして。
強く、その震える肩を抱きしめた。