第10章 慈雨
【翔】
「ねえ、帰り、赤坂見附寄ってくんない?」
車に乗って直ぐ、マネに寄り道を申し出た。
「大野さんへお土産ですか?」
全く…
察し良すぎだって…(^^;
「うん…」
「自分が買ってきますよ」
「いや、いいって」
「いえ!騒ぎになるよりいいんで!
チーズケーキ、2つでイイですか?」
「いや、ニノがいるはずだから、3つ」
路上のパーキングに車を停め、マネは、そこから直ぐの人気のケーキ店に向かった。
時々差し入れに使ったりするから、
電話しておけば行列にならばくても手に入る。
他のお客さんには申し訳ないけどね。
程なくして、マネはケーキの箱を2つ下げて
車に戻って来た。
「ごめんね~、サンキュ!でも二つ?」
「一個は自分で食べます!」
「ははは、そーゆうことか」
「明日は12時に迎えに来ますから」
「了解!んじゃ、気を付けて」
智くんのマンションに送ってもらい車を降りた。
つ~かさ。
何で俺がここに泊まるって決め付けてんだよ…
そうひとりごとを言って部屋の番号を押した。
「翔くん?おかえり~」
ニノの声でロックが解除された。
エレベーターを降りて部屋の前まで行くと
見てたかのようにドアが開いた。
「待ってたよ、入って」
「お邪魔しま~す!」
智くんの笑顔を見て、正直ほっとした。
リビングに入っていくと、ふんわりといい匂いがした。
「ハイ、これ♪…今日なに?」
「ありがと。オムライスだよ~。
あ、これ、もしかして…」
「そう。しろたえのチーズケーキ、好きだろ?」
「わあ~、食べたかったんだ~♡
もうずっと食べてない気がするよ…」
「だろ~?」
「流石、翔くん!」
「もう~、言ってみ!何でも分かってるから!」
「あの~…スープよそってもいいですかね~」
ニノがニヤニヤしながら声を掛けて来た。
「あ…そうだった!」
智くんは忙しそうにキッチンへと行ってしまった。
その耳が、真っ赤になっていたこと
俺、見逃さなかったけどね♪