第10章 慈雨
【智】
部屋に戻り、ソファに座って大きく息を吐き出した。
これから
どうなるんだろう…
あの、2人だけの閉ざされた空間から出てきたものの、これからどうなるのか、どうしたらいいのかなんて、まるでわからない。
本当は
あの閉ざされた世界で
朽ち果ててもいいと思ってた
俺が自分を殺すことで
潤をこの世界に留めておけるならって
俺なんかと違って
潤はみんなに愛される存在で
そんな潤を
俺のエゴだけで壊すことなんてしちゃいけないって
だけど
翔くんの顔を見て
ニノの顔を見て
相葉ちゃんの顔を見て
泣きそうな
潤の顔を見て
俺のやってたことは間違いだったんだって
そうわかった
俺が潤のためにと思ってやったことは
逆に追い詰めることになっていたんだと
上着のポケットにねじこんでたスマホを取り出した。
トーク画面を開いても、やっぱり送ったメッセージは既読にならないままで。
俺は、ぎゅっと拳を握り締める。
しっかりしなきゃ
こうなったのは
全部俺の責任だ
俺が潤の過ちを許せなかったから
俺が
翔くんのことを好きだってことに
気付かなかったから…
頭の中に、ふわりと翔くんの優しい微笑みが浮かんできて。
頭を振って、それを掻き消した。
今は
翔くんのことは考えないようにしよう
とにかく潤を取り戻さないと
目を閉じて、かつての優しい潤の眼差しを目蓋の裏に浮かべていると、手の中のスマホが震えた。
マネージャーからの電話だった。
「もしもし」
出ると、明日からの仕事のスケジュールの話で。
休んでる間、俺の仕事だったものは殆ど翔くんが代わってくれてたから、少し翔くんを休ませたいってことだった。
「うん、もちろん。俺がやれることは、全部やるから」