第10章 慈雨
【翔】
取りあえずは『嵐』としても動き出した。
俺たちはプロだ。
アイドルとして、
まあ年齢的には厳しい感も否めないけど…
『国民的アイドルグループ』と呼ばれ、
その第一線を牽引してきた自負もある。
その俺たちが、グループ内のドロドロした恋愛沙汰なんかを、世間の目に晒しちゃいけない…
だって、俺たちは夢を売る仕事だから…
口には出さなくても、
松潤も、智くんも、ニノも相葉くんも、
それは承知してるはずだ。
俺のせいでこんなに拗れてしまったんだから
俺が何とかしなきゃいけないんだ…
俺の全てに替えても…
「翔くん…」
智くんも、松潤も、俺が…
「翔くん!」
「え?…あ、なに?なんか言った?
ごめんね、運転に集中しちゃってたのかな~?」
無理して笑った俺の左手を、智くんがぎゅっと握った。
「一人で何とかしようなんて、思ってないよね?」
「智くん……」
驚く俺に、智くんは目を細めて笑った。
「やっぱりね~、そんなことだと思ったよ。
勘違いしてもらっちゃ困るよ!」
「勘違い…?」
「翔くん、ひとりで嵐を支えて来たなんて思ってないよね?」
「そんな!…そんな訳ない…じゃん…」
「だよね?俺たち5人で嵐だよ?
いい時も、悪い時も、肩組んで同じ方向を見て歩いて来たんだよ?」
「…智くん…」
「俺は、乗り越えられない事なんてないって、
そう思ってる…思ってるし、信じてるんだ…
な~んてな。俺が言えることじゃないか~」
………
そう言って笑った、智くんの透明な横顔が
俺の胸に強く刺さった。
……智くんを支えなきゃ///
松潤を元に戻さなきゃ…
なんて///
そんなガチガチの状況に、
周りが見えなくなってたのは、俺だった。
俺にそんな力なんか、
あるはず、ないのにね…
ふっと、肩の力が抜けた気がした。