第1章 風花
押し返そうと思えば、出来ないことはない。
でも、相葉くんはそれをしない。
さんざん唇を弄んでから、そっと離れると、
ぎゅっと瞑っていた目をゆっくり開けて、俺を見つめた。
戸惑いと恐怖に縁取られたその奥に、
微かに息づいた欲情の色を、
俺は見つけてしまった。
いける!!
そう確信した俺は、彼の唇が拒否や疑問の言葉を紡ぐ、その前に…
もう一度唇を重ねた。
今度はもっと深く…熱く…
舌先を奥へと捩じ込み、逃げるそれを追いかけると、遠慮がちに彼の方から絡めてきてくれた。
その喜びが、俺の身体の奥に灯を灯した。
深くなる卑猥な水音と、時折漏れる相葉くんのくぐもった吐息に、俺の下半身は熱を集め始めていた。
…俺…男でも…ちゃんと欲情するんだ。
ここまでしといて今更だけど、
メンバーの彼に、俺はちゃんと機能するんだ…
改めてそう思ったことが、俺の中にあった偏見という壁を崩していく。
……愛し合うのに、気持ちを確かめ合うのに、
性別なんか、関係ないんだ…
大切なのは、相手のことを思う気持ちと、
身体を繋げたいという欲望…
執拗に唇を貪りながら、片手でシャツのボタンを弾いていき、その奥へとそっと手を差し込んだ。
「あっ…翔ちゃん…」
思わず甘い声を漏らした彼のシャツを、大きく左右に開くと、引き締まった筋肉質の上半身が現れた。
見慣れたはずのそれになのに、
ドキドキして、頬が熱くなることが不思議だった。
「雅紀…綺麗だよ…」
「翔ちゃん…俺…」
俺はそっと、雅紀の胸の飾りに唇を寄せた。
ピクンと小さく跳ねた雅紀は、俺の背中におずおずと両手を回してきた。