第10章 慈雨
「……美味しかったよ!ごちそうさま」
「そう〜?よかったぁ〜♪」
「相葉くん、今日仕事でしょ?」
「あ、うん。もうすぐ迎えが来るんだ…」
「そっか。いろいろありがとね…
俺は大丈夫だから…ニノにもよろしく言っ」
ピンポーン♪♪
えっ?
「あ、来た来た!」
相葉くんは戸惑う俺を尻目に、
来客を確認すると、
オートロックを解除した。
程なくして、迎えに出た相葉くんと一緒に入ってきたのは、
「ニノ……」
「あ、おはよ〜、松潤」
「ニノ、朝ごはんは?」
「まだ〜…、何かあるの?」
「だと思って、ニノの分もとってあるんだ」
「さっすがぁ〜♪」
…………驚く俺は放置して、
ニノは相葉くんの用意してくれた朝ごはんを、当たり前に食べ始めた。
「あー、うまっ」
その時、再び来客が…
「あ、迎えが来た!
ニノ、じゃ、後よろしくね〜♪
松潤、ゆっくり休んでね!」
バタバタと相葉くんは出掛けていき、
代わりにニノが味噌汁をすすっている。
「…ニノ…あのさ…」
「あ、俺今日オフなんだ!松潤は夕方からだっけ?たまはいいじゃん!それまで一緒にいよ♪」
……………一緒にいよ、って……
「卵焼き、甘さが足りないかな?」
いやいや…結構甘かったよ?
食べ慣れてるんだろうな〜…
ニノは旨そうに相葉くんお手製の朝食を
ペロリと平らげて
食器をキッチンに持っていって洗い出した。
「あ、ニノ…食洗機に…」
「あ〜、これだけだし、片付けちゃうよ♪」
鼻唄を歌いながら皿を洗うニノの横顔を
俺はじっと見ていた。
いつの間に相葉くんと打合せしたんだろ?俺を一人にしないようにって……
ふたりで交代で……
そんなに心配してくれなくてもいいのに。
当たり前の顔してそこにいて、
それについては何も言わないニノに、
何か言わなきゃって思うけど……
一人になりたいはずだった俺は、
ニノの歌う『君のうた』を聞きながら、
なぜだか不思議と笑顔になっていた。