第10章 慈雨
【潤】
智からLINEがあった。
でもそれを、
開けることが出来ないでいる俺…
夕べは、相葉くんの優しさに甘えて、
彼の温もりに包まれて、
なんだか久しぶりにぐっすり眠った。
ニノには申し訳ないけど、
人って、こんなに温かいということを
相葉くんが思い出させてくれた。
智を腕の中に閉じ込めて眠りについても、
その体温を感じる余裕が、
俺にはなくなっていたんだ。
逃げられないように、
自由を奪って俺の側に繋ぎ止めておく、
その事だけを考えていた。
飛び立てないように翼をもぎ取り、
見えない鎖で俺の元に繋いだ。
そんなことしても、逆に智の心は、
どんどん俺から離れていくのに…
愛してる………
ただそれだけなのに………
離したくない、
離れたくない…
だけど、どうしたら………
「ご飯できたよ、食べよ!」
「…………」
相葉くんに呼ばれてテーブルに行くと
彼が作ってくれた朝食が並んでいた。
「和食なら食べられるでしょ?」
「…ありがと」
白いご飯に味噌汁、
納豆と、卵焼きには大根おろしが…
「凄い…こんなの…」
「コンビニで材料買ってきたんだ♪
じゃ、食べようよ!いっただきま〜す」
「…いただきます…」
「……うまい」
「ホントに?よかったぁ~」
目の前で、相葉くんが笑っている。
湯気の立つ温かい朝ごはん、
俺に向けた優しい笑顔、
それがこんなに幸せなことだなんて…
「……甘い」
「あ、甘い卵焼き、嫌いだった?
ニノがさ、出汁よりそっちの方が好きで、つい甘くしちゃうんだよね〜」
「そうなんだ…嫌いじゃないよ…
なんか、小学校の遠足、思い出す…」
「あ、それね!分かる!
お弁当の鉄板だよね〜♪
あいつ、結局いつまでも
お子ちゃまの舌なんだろうな〜…」
「ふふふ、怒られるよ…」
「いいの!ホントの事だもん♪」
ニノのことを話す相葉くんは
本当に幸せそうで…