第9章 暁
「翔くん…俺たち、また元に戻れるよね?」
「智くん…」
「だって、俺が全部いけないんだもん!
潤の気持ちを受け止めてあげられなくなった…
潤は…潤は…
いつだって、真っ直ぐに俺を好きでいてくれたのに…」
「そっか…」
「分ってたはずなのに…見えなくなってて、
潤の気持ちが重くて…俺…」
「じゃあ、元に戻る?」
「え?」
薄暗い部屋の中…その時初めて智くんが俺を見た。
その視線に、俺も彼を見つめた。
こんなに側にいるのに…
触れてはいけない人…
「……もどれないよ…」
ふっと目を伏せて智くんはそう言った。
俺たち…一緒に並んで歩ける日が来るのかな?
『大丈夫』ってそう言ったけど、
本当は不安だよ?
潤と心から笑い合える日が来るのかな?
って…
その時は智くんが隣に居てくれるのかな?
だけど、俺以上に智くんは不安なはず…
自分を責めて苦しんでいる。
俺が支えなきゃ…
後悔しないって、そう決めて動き出したのも自分だから…
くよくよしても
後ろを向いても何も解決しないから。
「智くん、きっと潤とも分かり合えるよ!
俺が付いてるんだから!心配しないで…
今日はゆっくり休もう?」
俺の自分に言い聞かせるような、
それでも心からの力強い言葉に、
智くんは笑った…
その切なげな笑顔に、胸が締め付けられる…
抱き締めてあげたい…
震える心を…温めてあげたい///
でも……
「…翔くん…手…」
「んっ??」
「手…繋いで寝てもいい?」
「あ…う、うん…いいよ…」
布団の中で手を伸ばすと、智くんの少し冷たい手に触れたから、そのまま強くそれを握った。
「おやすみ…」
華の様に笑った智くんはそのまま目を閉じた。
少しやつれて細くなった頬のラインを見つめながら、
俺も目を閉じた。
繋いだ手の温もりだけは、
嘘じゃない……
そう思うから。
「…おやすみ…智くん…」
小さな寝息が、俺の耳に届いた。
それを聞きながら、
俺もいつの間にか夢の中へと落ちていった。