第9章 暁
【翔】
名前を呼んだら、
不安げに眉を下げて、智くんが俺を見た。
なんだか、俺……
智くんにこんな顔させてばっかだなぁ……
「あのさ…足に湿布貼るの、手伝ってくれない?」
「え?あ、そっか!そうだよね!!
俺、そのために来たのに〜
待ってて♪湿布持ってくるから〜」
智くんは、何だか嬉しそうに寝室を出ていった。
ふふっ……なんか、可愛いな……
ベッドの上に膝を立てた俺の左足に、
器用な手付きで包帯を巻いてくれた智くん…
「凄い、上手だね〜、流石智くん!
看護師さんにもなれそうだよ…」
「ホントに?じゃあ、翔くん専属の看護師さんになってあげるよ♪」
「専属って、俺そんなに怪我する前提?」
「ふふふ、だって翔くん、こうみえて、
何気におっちょこちょいだしさ……
前もリハで骨折したよね〜?」
「あ〜、そんなこともあったよね〜」
「…………」
「………」
不意に絡んでしまった視線を、
俺たち二人は離すことができなくて……
「……………もう、寝るよ…」
先に反らせた智くんが、ベッドを降りようとする、その手首を慌てて掴んだ。
「……翔くん?…」
「お願い…何もしないから、ここで寝て?」
「…でも……」
「寝てる間に、智くんが消えちゃいそうで…」
「……いいよ」
ベッドで並んで仰向けになった。
幸か不幸か、クイーンサイズのベッドは
大の男がふたり並んで寝ても、
十分な広さで…
隣の智くんには触れることも無い。
「潤……」
「…うん…」
「大丈夫かな?」
「大丈夫だよ…相葉くんが付いてるし…それに」
「……?」
そうだよ…潤だって、自分でどうしたらいいのか、分からなくなってたんだ…
『嵐』を大切に思っている潤が、
いつまでも智くんを隠したままでいられるなんて、無理だって分かってる。
だから……
振り上げた拳を、誰かが力ずくで下ろしてくれるのを、待っていたはずだ。