第9章 暁
【ニノ】
翔ちゃんが言ったことを、
それぞれが、自分の気持ちを乗せて、
心の中で反芻し理解しようとしてる。
松潤は、一点を見つめたまま…
正確にはそれよりもずっと遠くを見ているのかもしれないけど…
唇を強く結んだまま。
大野さんは、困ったように眉を下げて、
それでも心配なんだろう、
松潤を見ていた。
雅紀は俺をチラチラ見てる。
この後どうすんの?って、俺に助けを求めてるらしい。
……そんなこと言ったってさ…
その時。
「俺、帰るよ…」
最初に口を開いたのは翔ちゃんだった。
「あ、じゃ、俺送ってくよ…雅紀は?」
「俺は…ここに泊まるよ」
「そっか…分かった」
俺は雅紀と小さく頷き合う。
松潤を頼んだ、っていう俺の気持ちに
雅紀の目は『大丈夫』と、そう言っている。
「…俺も送って?」
大野さんが俺に向かって言った。
「お、おう…」
そうだよな…
昨日まで一緒だったとはいえ、
もうここに泊まるって訳にはいかないよね…
「…相葉くんも、俺はいいから、帰りなよ…」
「そんな冷たい事言うなよ~!」
雅紀は松潤に肩を組んでソファーに一緒に座るのを見て、俺は翔ちゃんに寄り添った。
「脚、平気?」
俺の肩に翔ちゃんが掴まるのを見て、
その反対側から、大野さんが支えようと手を伸ばしたけど、途中で止めた。
この場で…
松潤が見ている目の前で、翔ちゃんに寄り添うことは、今は避けるべきだと思ったんだろう…
大野さん…あなたにしちゃ賢明だよ。
リビングを出る瞬間、振り返った俺は、
「雅紀…また明日な……松潤、また話そう」
「おう!ニノ、翔ちゃん、頼んだよ?」
「……」
無理して明るさを振り撒く雅紀とは対照的に、松潤は組んだ手に額を付けたまま動かない。
バタンッ…
静かに玄関のドアが閉まった瞬間、
肩の力が一気に抜けた気がした。
「はああぁ…」
思わず大きなため息が出た。