第9章 暁
「だから…俺は、智くんとは付き合わない」
「…なに、を…」
睨みつけながらも、松潤の声は震えてる。
「…翔くん…」
おーちゃんも、泣きそうな顔で見つめてる。
その中で、翔ちゃんはそっと目を伏せて。
ふーっと大きく息を吐き出した。
「俺…自分の勝手な欲望のままに、ニノと相葉くんを苦しめて…傷付けて…その上、今度は松潤と智くん…ホント、最低だよな…」
俯きがちに、自嘲するような笑みを浮かべる。
そんな翔ちゃんの顔、初めて見た。
いつだって、真っ直ぐ前を見据えて、顔を上げているような人なのに。
「でも…こんなことした俺を、ニノは笑って許してくれて…智くんだって、俺の勝手な思いを受け入れてくれて…ようやく、わかったんだ」
そうして、苦しい胸の内を吐き出して。
顔を上げた翔ちゃんは、いつものように真っ直ぐに前を向いていた。
「俺は、智くんが好きだ。でも、それ以上に、智くんと松潤とニノと相葉くんに幸せでいてもらいたいと思ってる」
松潤が、また大きく震えた。
「…っ…ふざけんな…」
「もし今、智くんが松潤と別れて俺と付き合ったとしても、俺のことを振って松潤と付き合い続けたとしても…どうやっても、智くんは幸せになれないと思う」
「…翔くんっ…」
おーちゃんの目から、大粒の涙が零れ落ちる。
「だから、俺は今、智くんの傍にいるべきじゃない」
言い切った翔ちゃんの顔には、笑みが浮かんでいて。
「待つよ。智くんが、俺を選んでくれる時まで。例え、その瞬間が永遠に来なくても」
どこか、清々しささえ感じさせるような、表情だった。