第9章 暁
【雅紀】
「ごめん…ちょっと顔洗ってくる」
散々泣いて。
目をありえないくらい腫らした松潤は、急に恥ずかしくなったのか、逃げるように洗面所へと走って行った。
その隙に、急いで携帯を確認する。
ニノから、鬼のように着信が入ってた。
慌てて掛け直すと、ワンコールで出る気配。
『遅いっ!』
謝る前に、怒られた。
「ごめんってぇ~!それどころじゃなかったんだよ!」
言い訳しようとしたら、大きな溜め息が聞こえてくる。
『今、どこ?まだ潤くん傍にいるの?』
「あ、うん、今松潤のうち」
『…わかった。これからそっち行く』
「へ?おーちゃん、どうなったの?」
『ここにいる』
「ええっ!?」
それって、おーちゃんも来るってこと~?
『それから、翔ちゃんも』
「ええっ!?それって…マズくない?」
『なんでだよ』
「だってさっ…」
だってだって!
それって松潤の気持ち、逆撫でしちゃう気がするんだけど…。
『だけど、このままって訳にはいかないだろ?』
「そう、だけど…」
『とにかく、そっち行くから』
有無を言わさない口調で、強く言われて。
「う、うん…わかった…」
頷くしか、なかった。
だって、こういう時のニノに逆らったらチョー恐いし。
そもそも、逆らうことなんかできないもん。
まぁ…なんとかなるかぁ…
なんとかなりそうもない気もするけど、案外なんとかなるかもしれないし。
このままでいいわけもないし。
確かに、ちゃんとみんなで話し合った方がいいのかもなぁ…。
『じゃあな』
プツッと切れた携帯を見て、深いため息がでた。
「…電話、ニノから?」
不意に声を掛けられて、飛び上がる。
振り向くと、前髪を濡らし、タオルを首に掛けた松潤がジッとこっちを見てた。
「あ、う、うん」
「帰んなよ。待ってんでしょ?」
「いや…でも…」
「…俺、大丈夫だからさ」
そう言って微笑んだ松潤の瞳は、さっきまでとは違ってとても穏やかだった。