第9章 暁
ぽつぽつと。
松潤は今までのおーちゃんとのことを話してくれた。
ずっと好きで、恋い焦がれてて。
告白してOKもらえたときは、飛び上がるほど嬉しかったこと。
恋人になって、楽しかった日々。
だけど、時々おーちゃんの視線が自分じゃないところを見てる気がして、不安に駆られたこと。
俺とニノが羨ましくて、自分たちのことも周りに知っておいてもらいたいって言ったのに、おーちゃんは頑なにそれを拒否したこと。
小さな疑心暗鬼が重なって、不安が少しずつ大きくなっていったこと。
…健くんと、一晩の過ちを犯したこと。
それでおーちゃんと喧嘩したこと。
別れたいって言うおーちゃんを、どうやって引き留めたらいいのかわからなくて。
監禁するように、別荘へ閉じ込めたこと。
「…わかってる…こんなことしたって、智の心は戻ってこないって…でも…どうしても諦めきれないっ…だって俺、まだこんなに智が好きなのにっ…」
いつもしゃんと伸びた背中を小さく丸めて。
松潤は小刻みに震えてた。
最後は、何度も言葉に詰まって。
そこまで言い切ると、堪えきれない嗚咽を漏らす。
「…っ…うぅぅっ…」
その苦しげな声に、俺まで息が出来なくなりそうで。
涙が止まらない。
どうしたら、いいんだろう…
どうしたら、みんな幸せになれるんだろう…
今、おーちゃんを松潤から引き離したら、松潤は本当に壊れてしまう気がする
でもだからって、おーちゃんの気持ちを押し込めるのは間違ってるし…
みんなが幸せになる方法なんて、ないのかな…?
翔ちゃん…
ニノ…
俺、バカだからわかんないよ…
震える背中を何度も擦りながら。
着信を知らせる紅い光を放つ携帯を、助けを求めるように見つめた。